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遊女が逃げ切れなかった最大の理由とは? うつせみと新之助に立った“心中フラグ”【大河ドラマ『べらぼう』】


大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」第12回「俄なる『明月余情』」では、俄祭りの企画を巡り、大文字屋(演:伊藤淳史)と若木屋(演:本宮泰風)が激しく争った。一方の蔦重(演:横浜流星)は、勝川春草(演:前野朋哉)による墨摺りの冊子制作を思いつき、序文を朋誠堂喜三二(演:尾美としのり)に依頼。そして、俄祭りの最終日の喧騒のなか、うつせみ(演:小野花梨)と小田新之助(演:井之脇 海)は手を取り合って大門を出て行くが、2人の未来は決して明るくはないのである。


 

■遊女が逃げ切れなかった社会の仕組みと最悪の結末

 

 遊女は女郎屋にとって貴重な“売り物”である。だからこそ吉原は徹底した脱走対策を行っていた。大門の出入りを厳しく制限するのはもちろん、高い塀とお歯黒どぶに取り囲まれた吉原はまさに“牢獄”だったのである。

 

 遊女が吉原を出ていくためには、年季明けまで働くか、身請けされるしかなかった。しかし、遊女の身請けには莫大な金がかかるため、容易ではない。そこで、間夫(情夫)と添い遂げるために遊女たちは「足抜け」つまり脱走を図るしかなかったのである。

 

 とはいえ、吉原の外に出ること自体が難しい。こういう場合、大抵は男が脱走経路を確保し、場合によっては人を雇ってサポートさせることもあったという。ちなみに、足抜けが失敗すると関わった者はみんな罰せられた。

 

 女郎屋にしてみれば、遊女が脱走するということは稼ぐための“商品”を失うことであり、他の遊女たちにもしめしがつかない。店のメンツにも関わる。だからこそ足抜けが発覚した時点で江戸中に追手を差し向けた。宿屋や飛脚問屋など、徹底的に捜索するため、3日と経たずに連れ戻されることがほとんどだったという。この時、捜索にかかった金は逃走しようとした遊女本人の借金となり、年季明けまでの期間が延びることもあった。

 

 そもそも、女性が遠くに逃げること自体がほぼ不可能だった時代である。というのも、当時江戸幕府は女性が藩外に出ることをかなり厳しく制限していた。人々は身分証明書となる「往来手形」を携行しなければ関所を通れない。また「関所手形」も存在したが、男性は関所手形を携行していなくてもどうにかなった。

 

 一方で、女性の出入りはかなり難しかった。とくに江戸を出て西方に向かう女性は、大名の妻子がこっそり抜け出す可能性などを考慮してかなり厳しく検分されたのである。女性は名前、住所・身分・出発地と目的地、同行者や乗物の有無等が細かく記載された「女手形」を持っていなければ関所を通ることは許されなかった。暗い夜に山道を抜けて関所を通らないことも可能ではあったが、体力的にも難しい方法である。

 

 そんなわけで、遊女が追手に追いつかれることなく逃げ切ることは至難の業だった。連れ戻されれば過酷な折檻が待ち受けており、恋人にも会えなくなる。追い詰められた男女は心中を選ぶこともあった。

 

 大河ドラマ『べらぼう』では、浪人の身分である新之助が遊女うつせみを連れ、祭の喧騒に紛れて大門から出て行った。しかし、うつせみの不在はすぐに松葉屋の主人らに知られるだろう。新之助が平賀源内の元にいるということも知られているはずである。そして、新之助自身、あまり金を持っていない。果たして、2人の逃避行は成功するのだろうか。最悪の結末を迎えないことを祈りつつ、2人の続報に注目が集まる。

イメージ/イラストAC

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歴史人編集部れきしじんへんしゅうぶ

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