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なぜ歴代天皇は「伊勢神宮」を無視してきたのか? 消された「本当の皇祖」とアマテラスの真実

日本史あやしい話


皇祖神(天皇の祖先の神)であるアマテラスが祀られている伊勢神宮。しかし明治になるまで、持統天皇を除き伊勢神宮を参拝した天皇はひとりもいなかった。じつは本来のアマテラスについては不自然な点が多く、有名な「岩戸隠れ」前後で性格が一変していたり、『日本書紀』への初登場時は名前が異なっていたりする。そのため、もともとは神ではなく「巫女」であるという説や、アマテラスが持統天皇によって祀りあげられた皇祖であるという説まである。どういうことなのか? 真相に迫りたい。


 

日本初のストリッパーが踊り狂った「天の岩屋」

 

 アマテラスが、弟・スサノオの傍若無人ぶりに耐えかねて、突如「天の岩屋」に閉じこもったとのお話は、よく知られるところである。太陽の女神ゆえ、国中が暗闇となり、昼夜の区別もつかなくなってしまったとか。

 

 これには、八十万の神々たちも困った。そこで、「天の安河の辺り」に集まって対策を練ったと、話を続けるのである。ここでは、まずその情景から振り返って見ることにしたい。

 

 このアマテラスを「天の岩屋」から引き出すための計画を練ったのは、タカミムスヒの子・オモイカネであった。その計画というのが、実に念の入ったものであった。

 

 まず、常世の長鳴鳥(ながなきどり)を集めて長鳴きさせることから始まる。祈祷の後、いよいよアマノウズメの登場である。

 

 なんと、桶の上に立ち、胸乳も露わに、腰に結んだ紐さえ解けて下腹部さえ見えるほどの姿となって踊り狂ったというからビックリ!

 

 もちろん、これが日本初のストリッパーだったことは、おそらく間違いないことだろう。これには、居並ぶ神々も拍手喝采。声を合わせて笑騒ぐ始末であった。この騒ぎを不思議に思ったアマテラスが、岩戸をわずかに開けて外の様子を窺った。

 

 と、その隙を捉えて、すかさずアメノタヂカラオがアマテラスの手を取って引き出してしまったのだ。こうして、世は再び明るさを取り戻したとして、ひとまず話の幕をおろすのである。

 

■なぜ、最高神が隠れることになったのか?

 

 それにしてもこのお話、なんだか奇妙だ。なぜ皇祖として絶対的な神力を擁するはずのアマテラスが弟から逃げるかのように引き籠ってしまわなければならなかったのか、それが全く理解できないからである。

 

 このアマテラスの「岩屋隠れ」に関しては、「日食に怯えた人々によって、太陽神に仕えていた巫女が殺害されたことの象徴」とか、「天の岩屋」を邪馬台国に見立て、そこで起きたことを「卑弥呼の死」と「台与の出現」とみなす説(白鳥庫吉氏)もあるが、筆者が注目するのが、アマテラスそのものの捉えられ方の変貌である。

 

 つまり、この「岩屋隠れ」を境として、それ以前のか弱き女性像から、それ以降の威厳漂う偉大な神へと大きく変身していることに注目したいからである。

 

■弟に怯える「か弱き女性」から、畏怖される「神」へ

 

 かつては、高天原を追放された荒れくれ男の弟・スサノオが暇乞いをしようと訪ねてきただけにもかかわらず、顔色を変えるほど恐れおののいたというから、か弱き女性だったというほかない。

 

 ところが、「天の岩屋」を出てからのアマテラスの様相は一変する。特に、神代から人代へと移った初代・神武天皇紀以降、たびたびアマテラスの名が登場するが、そこではもはや、か弱き女性などというような姿ではなかった。

 

「東征」で苦境に立たされた神武天皇の救出に動いたのが、アマテラスであったことを思い起こしていただきたい。救出をタケミカヅチに命じたのは、アマテラスであった。また、崇神5年に疫病が流行って多くの民が死んだのも、倭大国魂と共に御殿内に祀っていたアマテラスの「勢い」によるものとみなしている。

 

 つまり、この時のアマテラスは、以前のようなか弱き女性ではなく、人々に恐れられるほど威厳漂う神へと変身しているのだ。この奇妙な移り変わりをどう読み解けばいいのか? これがアマテラスにまつわる、大きな謎というべきだろう。

 

「か弱き女性がなぜ、最高神にまで祭り上げられたのか?」その謎を解き明かしたいと思うのだ。

 

■アマテラスは男性神・タカミムスヒを祀る巫女だった!?

 

 アマテラスは、その名前についても謎がある。『日本書紀』にその生誕の模様が記されているが、そこでは、日の神である「大日孁貴(おおひるめのむち)」という名で登場するのだ。それが、一書では天照大神とも言う、との回りくどい呼び方をしている。

 

 その謎解きに大きなヒントを与えてくれるのが、筑紫申真氏の著書『アマテラスの誕生』である。同書によれば、もともと日本各地の土豪や民衆によって祀られていた神とは、「天照」(アマテル)と呼ばれた男の太陽神だったという。これは太陽の霊魂を表したもので、日本中のどこにでも祀られていた自然神というべきだろう。

 

 伊勢の地にも地方神として伊勢大神が祀られていたが、これは日の神というだけでなく、風の神あるいは雷の神でもあったとか。この神が地上に降臨するにあたって、まず、皇大神宮の西にそびえる神路山の中の一つ・鼓ケ岳の山頂に降り立ったという。

 

 中腹から山麓へと下った神は、そこにそびえる樹木に依り憑いた後、五十鈴川の中に潜り込む。巫女(斎王)が川の中に入ることで、彼女自身が神の依どころとなるとか。

 

 ここに登場する樹木が重要で、これが樹木に依り憑く高木神、つまりタカミムスヒを表しているとも。アマテラスの前身である大日霊貴とは、つまるところ、この男性神であるタカミムスヒを祀る巫女だったのではないかと指摘されている。

 

 巫女であったアマテラスが、やがて神として祀られるようになっていく。祀る女性から、祀られる女神への変貌である。そして、7世紀も終わりを迎えようとする頃、この女神の神格が究極にまで高められて、ついには皇祖神へと祭り上げられていったというのだ。

 

 さらに、この変貌を画策したのが、女帝・持統天皇である、との説にも注目したい。

 

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藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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