トランプ関税で世界同時株安…「過去に類例のない負のショック」、大戦招いた「ブロック化」懸念も
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[危機~世界経済秩序]<1>
東京株式市場で日経平均株価(225種)が3000円近く暴落した7日午前、日本銀行では東京・日本橋本石町の本店で定例の支店長会議が行われていた。米国のトランプ大統領が発表した「相互関税」は世界同時株安を招き、実体経済にも影響を及ぼそうとしている。支店長会議後、正木一博・大阪支店長は記者会見で「過去に類例のない、経済に対する負のショックだ」と危機感を隠さなかった。

株価が急落した例は過去にいくつもある。今回は何が違うのか。過去最大の下落率を記録した1987年10月のブラックマンデーや、昨年8月の暴落は、米国のインフレ(物価上昇)や雇用悪化など構造的な問題が要因で、実体経済が悪化する不安から投資家がパニックを起こした。
しかし今回は、自由主義を主導してきた超大国の指導者が自ら、自由貿易体制にノーを突きつけた衝撃は大きい。無差別な高関税は、経済活動の重しとなり、世界のサプライチェーン(供給網)をまひさせようとしている。
米投資銀行リーマン・ブラザーズが倒産した「リーマン・ショック」(2008年9月)も世界の株価を暴落させた。金融危機から実体経済が悪化し、日米欧の先進国は新興国も交えた「G20」(主要20か国・地域)で危機対応に当たった。今はその協力関係はもろい。
世界が景気後退の可能性は60%
米JPモルガン・チェースは3日、「年内に世界経済が景気後退に陥る可能性は60%」と分析するリポートを公表した。現実味を帯び始めた景気悪化を回避する方法はあるのか。SMBC日興証券の丸山義正氏は「トランプ政権が関税軽減のディール(取引)に動かない限り、景気後退リスクは解消されない」と話す。トランプ氏の判断一つに世界が右往左往している。
今回の危機を1930年代の世界経済ブロック化に例える見方も出ている。米国は、世界恐慌下の30年に制定した「スムート・ホーリー法」で他国に高関税を課し、世界経済のブロック化を招いた。先の大戦の遠因になったとの指摘もある。
経団連の十倉雅和会長は7日の記者会見で、「自由貿易体制が維持できるか岐路に立っている」と指摘した。出口の見えないトランプショックに世界は、その影響を測りかねている。
トランプ氏の関税政策は、世界経済の混乱だけでなく、自由貿易体制や世界秩序の崩壊を招きかねない。世界はどこに向かうのか。トランプショックの影響を探る。