【特集】建築物の実測調査を通して深まる法政大学との連携…普連土

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  普連土学園中学校・高等学校 (東京都港区)の有志生徒が昨年8月5日、昭和の名建築家大江宏の手になる梅若能楽学院(同中野区)の実測調査に参加した。この調査は、法政大学デザイン工学部建築学科の小堀哲夫研究室が進めている建築調査プロジェクトの一環。同大からの参加呼びかけに応じて集まった生徒たちは、メジャーを手に、建物の構造物の寸法を計るなどし、建築の奥深さを体感した。

「外の世界に触れる機会」として取り組みを強める高大連携

法政大学との連携について説明する池田教諭
法政大学との連携について説明する池田教諭

 同校は近年、高大連携の取り組みを強めている。2023年10月には、東京女子大学と連携協定を締結。同大から講師を招いて、女性学に関する講演などを実施している。また、同年6月、東京理科大学と「学校インターンシップに関する協定」を結び、教職志望の理科大生を受け入れている。さらに年数回、同大で同校卒業生を案内役とする独自のキャンパスツアーを実施するなどしている。

 こうした高大連携の取り組みについて、広報部長の池田 雄史(ゆうし) 教諭は「生徒たちに、外の世界に触れる多彩な機会を提供していきたいという考えから実施しています」と話す。「毎年春休みと夏休みには、本校教員の指導による教養講座を実施していて、そこでも東大博物館見学やボランティア体験など、社会を広く知るための活動を行っています。それらの活動の成果は、東北大学工学部合格、東京芸術大学美術学部合格といった進学実績にも表れています」

 昨年の夏休み中に、法政大学デザイン工学部建築学科の小堀哲夫教授と学生たちの指導を受けて行われた梅若能楽学院の実測調査もその一つだ。

 この調査は、小堀教授の研究室が手掛ける「大江宏プロジェクト」の一環だ。大江は法政大学校舎(同千代田区)や国立能楽堂(同渋谷区)などを手掛けた昭和の名建築家であり、同大建築学科の前身である工学部建設工学科の創設メンバーでもある。

梅若能楽学院で実測調査を体験する生徒たち
梅若能楽学院で実測調査を体験する生徒たち

 近年、その作品の一部が老朽化したり、取り壊しが進んだりしていることから、小堀教授の研究室が、資料収集や見学・実測調査を行って大江の「人」と「作品」を後世に残す「大江宏プロジェクト」を進めてきた。今回の共同調査は、同大から同校へ参加の呼びかけがあって実現した。

 昨年8月5日、梅若能楽学院の前に集まった有志の中高生8人に対し、研究室の学生と大学院生らは、「建物の中で、自分が好きなもの、興味を引かれるものを選んでデッサンし、寸法を測ってください」と指示した。生徒たちは、早速メジャーや画帳を手に内部に入ると、柱や (はり) 、壁、舞台など、気になるさまざまな建築構造を実測していった。

 参加した生徒のほとんどは、建築調査に関する専門知識を持っていなかったという。高2の生徒の一人は、「建築とはどのようなものか、一度体験してみたいと思って参加しました」と話す。他の生徒も「デッサンを上手に仕上げるコツやメジャーの使い方など、学生の方々に細かい点まで教えていただきました」「能舞台に上がると声がよく響き、建築の設計とは、空間の用途を意識して行うものなのだということが分かりました」など、初めて体験する建築の新鮮な世界に目を輝かせていた。

 池田教諭は、「日頃から外部との交流を推進している本校としては、法政大学からの申し出は、またとない好機であると考えました。大学側としても、学生さんたちが指導する立場を経験し、中高生に大学の研究の実際を知ってもらうためのよい機会になると考えたようです」と話す。

中学校舎の実測調査や模型のケース作りなどで連携

中学校舎の実測調査に参加する生徒たち
中学校舎の実測調査に参加する生徒たち

 小堀研究室は23年、同校中学校校舎の実測調査を行っている。この校舎も大江の作品であり、プロジェクトの調査対象だったためだ。今回の調査への参加呼びかけは、この時の調査を機縁として生まれた連携が背景にある。

 この校舎を調査するにあたり、小堀研究室から同校に「生徒さんたちに調査に参加してもらっては」と声がけがあったという。18人の中高生が参加することになり、まず、同年6月に事前研究として、大江宏の著作の読書会が行われた。生徒たちはさらに、校舎内各所を下見して実測の重要性などを理解したうえで、8月21日から25日にかけて、学生らとともに校舎内で実測調査を行った。

 1968年に建設された中学校校舎は、東京都選定歴史的建造物に指定されている。列柱が並ぶバルコニーと白い壁、赤い三角屋根という外観は、当時の学校建築としては非常にモダンなものであったという。

 「大江氏がヨーロッパを周遊し、地中海やイスラム圏の建築にインスピレーションを得てこの校舎を設計したと聞いています。バルコニーが明るく開放的であるのに対し、室内は外光を抑えた落ち着いた空間となっています」と、池田教諭は説明する。

 生徒たちにとってそうした外観は見慣れたものだが、内部を調査して初めて知るさまざまな驚きがあった。参加した高1生の一人は、「いつも学んでいる校舎の新しい面を知ることができました。教室の配置や天井の様子など、さまざまな工夫が凝らされていることが分かりました」と振り返る。資料となる写真を撮影する際は、対象物とカメラが水平になるよう注意するなど、学生たちから細かい点までアドバイスを受けたそうだ。

生徒たちが製作した中学校舎模型の展示ケース
生徒たちが製作した中学校舎模型の展示ケース

 小堀研究室は、この実測調査を基に、中学校舎の模型などを作成した。2023年10月21日の同校文化祭では、調査に基づいて作成した図面や200分の1全体模型、50分の1部分模型などが公開された。

 その後、模型は普連土学園に寄贈されることになり、24年5月に土曜日を利用して計3回、同研究室の学生たちによる、模型の展示ケース作りのワークショップが開かれた。中高生たち15人が参加し、白地にレンガ模様の台座とガラスケースが出来上がると、講堂の入り口スペースに、ケースに収められた模型が展示された。

 こうした一連の連携活動が、昨年8月の梅若能楽学院の実測調査へとつながった。同大の「大江宏プロジェクト」は現在も進行中であり、同校は今後も実測調査へ参加することを望んでいる。「大学生たちと直に接して共に作業を進めていく中で、大学とはどのような学びをする場なのか、具体的なイメージをつかむことができたようです。また、建築の調査の実際に触れたことを、今後、自分の進路を定めていくうえでの一つのきっかけとしてくれればと考えています」と池田教諭は期待を込めた。

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:普連土学園中学校・高等学校)

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