ミャンマー地震でビル倒壊のタイ、中国への不信感広がる…資材が強度不足・証拠隠滅の疑い
完了しました
【バンコク=吉永亜希子、佐藤友紀】ミャンマーで3月28日に発生した地震では、震源から1000キロ・メートル以上離れたタイの首都バンコクでタイと中国国有企業の共同企業体(JV)が建設中だった高層ビルが倒壊して27人が死亡した。この惨事では資材の強度不足が発覚し、中国への不信感がタイ社会で募っている。

11日、倒壊現場では、ビルの4階ほどの高さに積み上がったがれきを重機で取り除く作業が続いていた。67人がまだ行方不明で、捜索も続けられている。
タイや中国のメディアによると、倒壊したビルは会計検査院の新庁舎として使用される予定で、約21億バーツ(約90億円)でタイ建設大手「イタリアンタイ・デベロップメント」と中国国有建設会社「中鉄十局」のJVが施工を請け負った。高さ137メートルで、全体の30%ほどの工事を終えていたという。
バンコクに多数ある高層ビルの中で、ビル全体が倒壊した唯一のケースとなった。建物の構造や耐震性、施工手法など多くの要素を検証しなければならず、タイ政府が調査を進めている。
10日には、タイ工業省の調査チームが記者会見を開き、工事に使用されていた鉄筋の一部が基準を満たしていなかったと発表。鉄筋を生産した中国系の製鉄会社は昨年12月、工場の安全対策が不十分だとして当局から対応を求められていた。
地元メディアによると、地元警察は100人近くに事情を聞いているが、地震翌日の29日には、倒壊現場に無断で侵入して工事の関連書類を持ち出そうとした中国人4人が一時拘束されて調査を受けており、証拠隠滅の疑いも浮上した。
中国国営新華社通信などによると「中鉄十局」は
中国企業への批判の高まりを受け、バンコクの中国大使館は4日、「調査や刑事訴追などについて協力する」と表明。「インフラ施設の建設は両国の協力関係において重要で、両国民に幸せをもたらした」と中国の貢献を強調した。
しかし、JVの下請け企業の労働者たちが9日に倒壊現場で行った会見の動画には「中国人の好きなようにさせてはならない」「タイ政府はタイ人が搾取されないようにすべきだ」といった批判的なコメントが1万以上寄せられた。