旧統一教会が即時抗告…民法上の不法行為を理由とした解散を高裁が支持するか注目
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世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は7日、文部科学省による請求を受け、宗教法人法に基づいて教団の解散を命じた3月25日付の東京地裁決定を不服として、東京高裁に即時抗告した。教団は「『結論先にありき』の決定だ」と全面的に争う方針で、高裁での審理は数か月以上かかる見通し。民法上の不法行為を理由とした初の解散命令を支持するか、高裁の判断が注目される。(糸魚川千尋)

高裁が即時抗告を棄却して再び解散を命じた場合、その時点で解散命令に効力が生じ、教団は宗教法人格を失う。清算手続きが始まり、税制上の優遇措置などを受けられなくなる一方、任意団体などとして宗教活動を続けることはできる。教団が最高裁に特別抗告しても清算手続きは続くが、最高裁が判断を覆すと手続きは停止される。

地裁決定は、教団の信者らが1980年頃から違法な献金勧誘を繰り返し、被害規模は約40年間で約204億円(被害者約1550人)に上ると指摘。「類例のない甚大な被害だ」と言及し、民法上の不法行為に該当する献金勧誘の多くが宗教活動として行われたことから、「教団の行為といえる」と判断した。
その上で、宗教法人法が解散命令の要件とする「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」にあたるとして解散を命じた。法令違反による解散命令は3例目で、不法行為を理由としたのは初めてだった。
教団側は7日、ホームページ上で即時抗告の理由についてのコメントを発表。政府が以前は解散要件に該当しないと解釈してきた民法上の不法行為を理由に、宗教法人を解散することは許されないとし、「教団を標的にした国家による宗教弾圧だ」と反発した。
また、2009年の教団による「コンプライアンス宣言」以降、被害の訴えは激減していると強調し、地裁決定について「顕在化していない被害を推測で認定してまで解散命令を下した。法と事実を無視したものだ」と非難した。

即時抗告の書面を提出後、東京・霞が関で報道陣の取材に応じた教団の近藤徳茂・法務局副局長は、「決定により、信教の自由や生存権が脅かされかねない状況だ。断固として闘いたい」と述べた。
高裁での即時抗告審は、地裁と同様に非公開で審理が行われ、解散を命じるか改めて判断される。書面での審理が中心だが、必要があれば審問を開いて証人尋問などを行うこともできる。
解散命令が出た過去2例の即時抗告審の期間は、オウム真理教のケースで約2か月、明覚寺(和歌山)では約8か月だった。今回は被害が長期、多岐にわたるため、審理により時間がかかる可能性がある。
即時抗告を受け、被害救済に取り組んできた全国統一教会被害対策弁護団の村越進団長は「教団は反省や謝罪の言葉を一言も述べず、被害に全く向き合おうとしていない。速やかに即時抗告が棄却され、解散命令が確定することが重要だ」とのコメントを出した。
教団の総資産1181億円、残余財産「天地正教」に帰属
宗教法人法によると、解散命令の効力が生じると、裁判所が選定した清算人による手続きで被害者らへの弁済が行われる。財産が残った場合は教団の規則で帰属先を決めることとなる。
3月25日の地裁決定によると、教団の総資産は2022年度末時点で1181億円。教団は09年6月、責任役員会で残余財産の帰属先を「天地正教」(北海道帯広市)とする決議を行っていた。
天地正教は1987年に設立された宗教法人で、旧統一教会の「友好団体」(教団幹部)とされる。教団が帰属先を天地正教と決議したのは、霊感商法を巡り信者らの会社が警視庁の捜索を受けた後だった。
全国統一教会被害対策弁護団は、元信者ら約200人が計約50億円の賠償を求める集団交渉を教団と進めており、解散が決まっても清算手続きで賠償が行われることが想定される。ただ、手続き終了後に申し出た被害者への賠償は困難が予想されることから、弁護団は、残余財産を天地正教などの関連法人に帰属させず、被害救済のための財団の新設が必要だと訴えている。
一方、教団の田中富広会長は3月27日の記者会見で、2009年の決議について「当時の役員はもういない。(安倍晋三・元首相銃撃の)事件以降、役員会で財産をどうするか議題になったことは一度もない」と述べた。